健康長寿福井を代表する食文化。
福井県嶺北地方で主に食される蕎麦。蕎麦に大根おろしをのせて出汁をかけたり(ぶっかけ)・大根おろしに出汁を加えてつけつゆにして食べる(つけそば)など、大根おろしを利用することから、「おろしそば」とも呼ばれています。シンプルな料理ですが、その味は奥深く、最近では長寿食としても注目されています。そばの歴史は古く、8世紀頃に大陸から朝鮮半島を経て日本に渡来、食用となったのは奈良時代と言われています。
当時の食べ方は現在のような麺状ではなく、そば粉をお湯で捏ねた「そばがき」や「そばだんご」が主でした。麺状と言われる「そばきり」となって一般庶民に広まったのは、江戸時代のことです。
福井でのそばの歴史は、朝倉孝影が一乗谷に築城した頃(1473~)から始まっていると伝えられています。いくつもの合戦を経た結果、籠城用食糧としてそばが重宝されたとか。というのも、そばは播種から約75日間という短期間で収穫できたからです。ただその頃もそばがきやそばだんごが主だったようです。
さて、福井で「そばきり」が登場するのは1601年。府中(現武生市→越前市)の城主となった本多富正公が、そば師の金子権左衛門を伴って赴任したのを機に、そばの食べ方が変りました。麺状そばに加え、大根おろしを添える食べ方が始まったと伝えられています。
麺状のそばに大根おろし。この組み合わせは庶民にも受け入れられ、その後、福井県と福井県玄そば振興協議会の指導と協力によりそば栽培と消費量が拡大、そして現在のおろしそば人気へとつながっていくのです。さらに福井のおろしそばが「越前おろしそば」として全国に広まったのは、昭和22年以降。昭和22年10月、昭和天皇が福井に来られた際、2杯ものおろしそばを召し上がられました。その後、皇居の戻られた後、召し上がられたおろしそばを懐かしみがられ、「越前のそばは大変おいしかった」というお言葉に由来しています。それから「越前そば」とも呼ばれるようになりました。